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鉄が守る地球上の生命

地球に生命の誕生を促し、またその生存を支えてきたのは鉄であるといったら皆さんは驚かれますか? 地球上に存在する鉄の量は32〜40%で、すべての元素の中で最も多いとされています。一方太陽系にある鉄の存在量は0.003% 質量といわれていますので、地球上の鉄の多さは際だっています。地球は水の惑星といわれていますが、実は鉄の惑星なのです。

 宇宙空間には宇宙線や太陽風など生命に致命的なダメージを与える物質が飛び交っています。太古の地球上にはそれらの有害物質が何の制約も受けずに降り注いでいました。そのような環境にはすべての生命体が対応できず、地球上には全く生き物がいませんでした。
 現在の地球の外周には地磁気とオゾン層という2つのバリアーが形成され、地表においても安全に生命活動が営まれるようになっていますが、その形成には生命の進化と同様に長い年月を要し、またそれらが作られるに至った経緯があったのです。

 今現在においても地球上には生命にとっては大きな脅威となる物質が降り注いでいます。人間はもとより様々な生命体が生きていられるのは、これらの有害物質から私たちを守ってくれるガードシステムが地球の外周で機能しているからです。
 その一つが地磁気ですが、この恩恵の形成には鉄の存在が大きく関わっていました。
原始の地球には大小様々な隕石が落下し、その衝突エネルギーで高温となった地表はどろどろに溶けた液状となり、様々な金属は自らの重さで地球内部に沈んで行きました。地球の中心部には鉄が主成分となる液状金属の核border="0" />ができたと言われています。そしてさらにその中心部では高圧のために鉄が固まり、固形物である内核と呼ばれるものができました。これに対して液状の部分は外核と呼ばれます。

 液状の外核は地球の自転のために一定方向に流れ、電気を起こします。そのため、地球全体が大きな磁石になり、そこから生じた地磁気が地球全体を覆うようになりました。

 高エネルギーの宇宙線や太陽風は地球の外周を覆う地磁気によって遮られることとなりました。また海中の生物が作り出した酸素はやがて海水中の飽和状態を 経て大気中に放出されましたが、それらの酸素の一部はオゾンへと姿を変えて大気の上層にオゾン層を形成しました。オゾン層は地球に降り注ぐ紫外線を遮断する機能を持ち、有害な紫外線から地球上の生命を守る働きをするようになったのです。


原始の海には鉄がたくさん溶けていた。

 鉄の大部分は地球の中心部に沈んでしまいましたが、それでも地表にはまだたくさんの鉄が残っています。現在の地殻には4.7〜7.1%の鉄が存在すると言われています。

 40億年程前には地球が冷えて海ができました。現在の海水はpHが8以上もあるアルカリ性ですが、当時の海水は原始大気に大量に含まれていた塩化水素の影響で強い酸性でした。そのため岩石中の鉄は海水中に大量に溶け込んでいたのです。酸素を呼吸して生きている現在の私たちには想像もつかないことですが、当時の海水中には(もちろん陸上にも)遊離した酸素が全くありませんでした。水素や炭素と結合した水や二酸化炭素としては存在したのですが、O2としての単独の酸素分子はなかったのです。従って鉄は酸化されることなく、溶解物(鉄イオン)として海水中にとどまることができました。
 生物の細胞液の組成は海水に似ていて、生物が海で生まれた証拠とされていますが、鉄や一部の金属は特別に濃く、鉄にあっては海水の3万倍もあります。それは生命が誕生した時の海水中には鉄をはじめとしたそれらの金属がが多量に溶けていたことを暗示しています。ところがある理由でそれらの金属がほとんど沈殿してしまい、生物が利用しにくくなってしまったため、生物は鉄を確保し、蓄えておくという手段を会得したのです。その結果として生物体内の鉄の濃度が高 く保たれているのです。


酸素は生命体が作り出した。

 地球が地磁気によって守られていることはすでに説明しましたが、最初の頃は地磁気の力もさほど大きなものではありませんでした。やがて地球が冷えて内核の形成が進み、地磁気が現在と同様の強さを持つようになりました。その結果今まで生命体の存在が許されなかった浅海の安全性が高まりました。それは太陽光の恩恵を受けられる生物の活躍の場が徐々に増えていったことを意味します。
 そこに登場したのがシアノバクテリアの仲間でした。シアノバクテリアは進んだ光合成システムを持ち、太陽光のエネルギーを使って二酸化炭素と水を原材料として有機物を作り出すことができるようになりました。そしてその際に排泄物として放出されたのが酸素だったのです。

 酸素のない世界に生息していた生物にとって酸素は「猛毒」でした。現代でも問題視される「活性酸素」と同じ感覚で捉えてみればわかりやすいと思います。
 シアノバクテリア自身は自らの排泄物である活性酸素を分解する酵素を持っていたとされています。すなわち本来なら自らの排泄物である酸素の毒性によって繁栄にブレーキが掛かるはずであったシアノバクテリアでしたが、酸素の弊害をコントロールするメカニズムを併せ持ったことにより、当時の地球環境の中ではまさに一人勝ちの状況となったのです。
 シアノバクテリアのピークは19億年前に訪れますが、その繁栄期間中酸素を排泄し、地球環境を汚染し続けました。その結果それまでの生物界の主役であった「嫌気性生物」は酸素の少ない海底などに追いやられることとなりました。


環境破壊を救ったのは鉄であった。

 当時の海水中には二価の鉄イオンが大量に溶けていました。シアノバクテリアの排泄する酸素は、まずこれを酸化して三価の鉄イオンに変えて行きました。三価の鉄はさらに酸化されて水酸化物となって沈殿し、海水中の鉄イオン濃度は徐々に減って行くこととなったのです。
 海水中の金属イオンの中でもっぱら酸素を引き受けて無害化したのは鉄イオンだけでした。やがて生物は増え続ける酸素の弊害に対処する機能も鉄を利用することで備えることができたのですが、その機能を獲得するまでの進化の時間を稼げたのは海水中の鉄イオンの量が極めて多かったからだといえます。


鉄を求めて陸上進出

 酸化するターゲットである鉄が尽きてくると海水中には遊離の酸素が溶け込み、やがて飽和量に達すると気体となって水界から離れ、大気中に貯まって行きました。
 酸素呼吸は発酵よりもエネルギー効率が良いため、やがて酸素を利用する(呼吸する)生物が増え、急速な進化を始めました。
 10億年から7億年前に掛けて大気中の酸素濃度が急上昇して現在のレベルに近づきましたが、このころには大気中の遊離酸素からオゾン層が形成され有害な紫外線も遮断されるようになり、海面において効率の良い光合成が安全に行われるようになったのです。
 こうして海中の鉄はほとんどなくなってしまうと、逆に生命が必要とする鉄が不足する事態となりました。生物が地上を目指したのは、そこには鉄があったからなのです。
 鉄がほとんどなくなった海中に比べて陸上の岩石は数%もの鉄を含んでいました。シアノバクテリアや真核藻類、地衣類などのうち鉄を溶かし出す能力を持ったものから地上に進出を始めましたが、やがて根を持つ植物が繁栄を始めました。これらに付随する動植物の遺体が分解された腐食物質に含まれるフミン酸やフルボ酸が鉄と作ったキレート化合物は川に流れ出し、やがて再び海に鉄を供給することとなりました。陸上に動植物が進出したことにより、海にも再び豊かな生 物相が呼び戻される結果となったのです。


大地は海に鉄を供給している

 酸素の増加に伴って大進化を遂げた私たち(好気性の生き物)には遊離酸素は無くてはならないものとなりましたが、現在の地球環境では鉄は川の水にも海の水にもほとんど溶け続けていることができません。なぜなら溶け出した鉄(鉄イオン)はすぐに遊離酸素で酸化されて水酸化鉄となって沈殿してしまうからです。

 海で生命が生まれた当時の地球の海では周囲に豊富な鉄イオンがあったことから、生命の維持システムの中に鉄は必須の成分として組み込まれたのですが、その後の酸素の大発生の過程で鉄イオンは極めて微量な存在となって生命体の周囲から失われて行きました。
 資源としての鉄そのものの存在が無くなったのではありません。水に溶けた状態の鉄、すなわち鉄イオンが希少な存在となったのです。生命体にとって体内に取り込むことのできる鉄はイオン化したものに限られますから、固形物としての鉄を水溶物に変える生物側の対応が必要になったのです。植物の多くは根から酸を出して不溶態の鉄を溶かして水溶物にする術を獲得しました。動物は体内に鉄を取り込んだ植物を食べることで間接的に鉄を摂取することとなりました。つまり陸上では植物が地殻内の鉄を取り込むことで食物連鎖の上位の動物にも鉄が供給される仕組みが完成されたのです。

 一方海への鉄の供給は陸上の動植物の残骸を生活の場とする様々な微生物の働きに因っているものと考えられます。地殻には数%といわれる不溶態の鉄が存在しますので、樹木の落葉が作る腐葉土の中の鉄は、酸化されることなく安定した状態で海まで運ばれ、生物に利用されます。それは腐食質の中のフミン酸やフルボ酸と呼ばれる有機酸が鉄と結びつくと、その結合する力は遊離酸素との結合力よりも強いため酸化されることなく海にたどり着けるからです。

試みに鉄イオンの多い湾内と鉄イオンの少ない外湾の海水を用いて植物プランクトンを培養してみると、鉄を加えさえすれば外湾の海水も湾内の海水同様に大いに増殖することがわかりました。すなわち外湾の海水は栄養分が不足しているのではなく、鉄が不足しているだけだったのです。

 海は広いな大きいなとは言われますが、そのうち生物が生息しているのは陸地に近いごく限られた海域でしかありません。それは食物連鎖の最底辺にある植物プランクトンを作り出すために不可欠な鉄が陸地から供給されているからです。あの広大な海の大部分は陸上の砂漠と同様に生産力が低いがゆえに生物の棲めない不毛のエリアなのです。その理由は鉄の供給量の不足にあるのではないかと考えられています。


南極パラドックス

 栄養塩類豊富な海流が何らかの事情で海面まで上昇すると、植物プランクトンの大発生を促し、それを餌とする小魚やさらに彼等を捕食する大型魚種などが集まり漁獲量の多い漁場を形成します。このような海流の上昇を湧昇と呼びます。人工的な構造物を作って湧昇を促す試みも行われているほどです。ところが南極海では栄養分の豊富な深層海流が南極大陸にぶつかって上昇するにもかかわらず植物プランクトンの大発生が起こらないという大きな謎があり、これを南極パラ ドックスと呼んでいました。
 近年水中の微量金属の測定技術が飛躍的に発達して分かったことは、これまでの測定方法は極めて不正確なもので、船舶や測定装置などの金属イオンが測定値に誤差を及ぼし、実際の値よりも千倍近くも多い数値が出ていたことが明らかになってきたのです。また太平洋の赤道域、北東太平洋にも南極周辺海域と同様に高栄養にもかかわらず植物プランクトンの少ないエリアがあることも分かりました。これらをHNLC(High Nutrinet Low Chlorophyll 高栄養低クロロフィル)海域と呼びます。外洋における鉄の濃度はnM(ナノモル)という極めて微量のレベルしかないことがわかりましたが、HNLC海域に共通しているのは鉄分がほとんど検出されないということでした。それらの研究からは植物プランクトンの発生から始まる生物生産は鉄の不足によって制約されているという「鉄仮説」と呼ばれる仮説が生まれました。

 南極で採取された氷柱に閉じこめられている大気や化学物質を調べると過去の気候やそれに及ぼした要因が推定できます。ロシアのヴォストーク基地で採取さ れた氷柱の分析によると、鉄の含有量が多い時期は二酸化炭素濃度が低く、鉄の含有量が少ない時には二酸化炭素濃度が高いことが分かりました。
 氷河期の南極周辺は強風が吹き荒れており、周辺の大陸から鉄分を含んだ塵や砂埃などが大量に供給されたのではないかと推測されます。皆さんご存じの中国大陸から飛んでくる「黄砂」は悪いイメージばかりが先行していますが、実はあの黄色は鉄鉱石の一種である「黄鉄鉱」の色であり、海の生産力を左右する重要な要素でもあるのです。
太平洋の亜寒帯の海域では栄養塩類は豊富なのに植物プランクトンの生産量の多いエリアと少ないエリアがあります。その差は何に起因するかと言いますと、風によって運ばれる「黄砂」の到達距離との関連であることが分かってきました。

 「黄砂」の小さな砂粒の中にも微量な鉄分が存在するのですが、その量は海水中の濃度に比べて大変に大きなものです。偏西風などによって運ばれた「黄砂」 が届く範囲では海の生産力は高く、そのエリアをはずれると鉄が足りないというだけのことで、生産力が激減してしまうのです。ことほど左様に海は鉄に飢えている実態があるのです。


海洋鉄散布実験

 「鉄仮説」を検証するために実際の海洋に鉄を散布して植物プランクトンの増殖を計測するという実験が1993年から2004年にかけてのべ10回各国の研究機関によって行われました。これには日本も参加していますが、概ね仮説は実証されたと考えて良さそうです。相手が広大な海洋であるだけに、鉄の供給によって生産された有機物沈降の部分の解明に難しさが残されているようですが、「鉄仮説」「鉄理論」として多くの科学者から支持され始めています。
 散布実験に際して海中から大気中への二酸化炭素の放出量が60%減少したとされる論文も発表されていますので、ひょっとしたら地球温暖化を解決する大きな可能性を鉄が握っているかもしれません。微量な鉄の存在が植物プランクトンの増殖を左右していることは明らかになったのですが、二酸化炭素を吸収した植 物プランクトンが海の表層で分解してしまったり、他の生物に直接あるいは間接的に捕食され、呼吸や消化分解によって海水に戻されるのであれば、炭素の固定にはならず地球温暖化の抑止効果は得られません。生体の死骸や残渣として深海に沈降し蓄積する事実が確認されれば二酸化炭素を海中深くに閉じこめられる可能性が浮かび上がってきます。しかし生態系への影響を危惧する見解を述べる研究者もいることから、その方法論についてはなお慎重な議論が交わされる必要があるでしょう。
地球温暖化については残念ながら効果的な対策がほとんど見あたらないことから、鉄の海洋散布には大きな期待が寄せられています。

NPO法人「森は海の恋人」

 今回の震災で大きな被害を受けた宮城県気仙沼に拠点のある自然環境保全を目的とする組織です。主な活動は森を育てて海を豊かにする為の植林、育林活動ですが、その根底にあるものは、山の植物がもたらす微量成分が海の生産力を左右するという発想です。
内湾で養殖業を営む漁師さんたちがそこに流れ込む河川の上流の山に広葉樹を植林して、養殖環境を保全しようという活動で、「漁師山に登る!」というキャッ チフレーズがもてはやされました。法人設立後すでに20年以上の歳月が過ぎていますが、その活動に対する理解と評価は高く、法人の代表である畠山重篤氏は 京都大学でフィールド科学教育センターの森里海連環学という新しい概念の学問で客員教授を務めています。
 山の植物がもたらす微量成分とはまさにフルボ酸鉄そのものを意味しています。
海の生産力を日々実感している養殖業者である彼等であるからこそ、鉄と生物との因果関係への理解が深いのだと思います。


「鉄炭団子」(てったんだんご)

 使い捨てカイロの中身は鉄と炭でできています。これにおかゆとクエン酸 を混ぜて直径5僂曚匹涼鳥匸に丸めたものが「鉄炭団子」です。この団子をヘドロにまみれた河川や海岸に投入するだけで、ヘドロが激減し悪臭も消え、水質が改善されて様々な水生生物が蘇るという環境改善のための取り組みです。山口県の瀬戸内海側で成果を上げているそうですが、どういうわけかヘドロの少ない日本海側では効果が顕著ではないそうです。

 金属にはそれぞれ固有の電位があります。異なる金属を電気的に結合して電解液(海水)の中に浸漬すると、電位の高い金属から低い金属に電流が流れます。 いわば小さな電池が作られることになるのです。電位の低い金属は腐食が促進されて金属イオンとして海中に溶け出します。その結果電位の高い金属は腐食を免 れて強度を維持することができるのです。海岸の岸壁や沖合のシーバースなどはすべて鉄で作られていますが、これらが海水中にもかかわらず錆びずに形を残しているのは電気防蝕というさび止めの技術が施されているからなのですが、他の金属を犠牲にして鉄を錆から守る方法を流電陽極方式と呼んで電気防蝕の重要な技術の一つとなっています。海水中の鉄の構造物を錆から守るには、アルミニウムや亜鉛など鉄に比べてイオン化傾向の高い(電位の低い)金属のインゴットを電気溶接で取り付けますと、鉄は錆びずにアルミや亜鉛が犠牲になって海水中に溶け出して長期間構造物の崩壊を防ぐことができるのです。
 たとえば10円玉と古釘を電線でつないで海水の中に入れますと、10円玉はいつまでもぴかぴかなのに古釘は真っ赤に錆びて、やがて溶けて無くなってしまいます。

 これと同様に鉄と炭(炭素)を電気的に結合し(団子にし)て、海水中に放り込むと炭に比べてイオン化傾向の高い鉄が溶け出し、海水中に二価鉄イオンが放出されることになります。ヘドロの堆積しているような水底はかなりの嫌気環境となっていますので、二価鉄イオンは遊離酸素で酸化されることなく、ヘドロ周辺の微生物に利用されることとなり、その活性を高める結果、ヘドロが分解される好循環が励起されるものと思われます。
団子にクエン酸を混ぜるのは鉄を直接溶かし出す他に、フルボ酸鉄に似た有機酸鉄を作ることで遊離酸素による酸化を防ぐ効果が期待できると考えているのでしょう。
 この運動が明らかな改善結果をもたらしている事実から、汚染された海の復活にまず必要とされるのが鉄イオンであり、その絶対量の多寡が運動の成否に密接に関わっていることが立証されたと言えるでしょう。

水槽も鉄不足?



 鉄が動植物の生産量を左右する絶対不可欠な物質であること、そして遊離酸素のある水中にはイオン状態で長くとどまれないことがご理解いただけたと思います。

 さていよいよ本題です。私たちのテーマとする水槽環境の中で鉄はどのような状態になっているのでしょうか。飼育水の中の鉄は足りているのでしょうか。

ここに市販の鉄試薬にうたわれている鉄濃度の理想値を紹介しましょう。
登場するのはセラ社とデュプラ社、共にドイツのメーカーです。


 
セラFeテスト取扱説明書にある鉄分濃度に対するコメント
  

鉄分濃度 判定及び対策
0.0mg/l 水草にとって望ましくありません。すぐに施肥をしてください。
0.1〜0.25mg/l 栄養不足です。3日以内に施肥をしてください。
0.5〜1mg/l 水草にとって理想的な濃度です。
>1mg/l 鉄分が多すぎます。一部の水替えが必要です。

デュプラテストFe説明書にある鉄分濃度に対するコメント

以下の数値よりも鉄分濃度が高い、または低い場合は対策が必要となります。
淡水・・・0.05〜0.1mg/ℓ
海水・・・0.05mg/ℓ


いかがでしょうか。同じ国のメーカーでも理想値が10倍も違うのです。
私たちはどちらの数値を信じればよいのでしょうか。
いずれにしても鉄イオンのサプリメントを全く添加していない水槽の水を測っても、ほとんどの場合鉄が検出されることはないようです。また長期間水換えをしていない飼育水の場合、鉄イオンはすみやかにリン酸と結びつきリン酸鉄となって沈殿してしまいます。従ってリンの蓄積によるコケの異常繁殖に困っているような汚い水槽では鉄を入れすぎということはほとんど起こりえず、リン酸イオンによる緩衝作用の様なものがまず働くようです。
どうしても鉄分過多を懸念される場合には念のため0.1〜0.3mg/l前後を目安に投入されることをお勧めします。

「二価の鉄」は当初水草への添加剤として考案したものなのですが、意外にも発売開始前に回収した様々なモニターのレポートから海水水槽、特に無脊椎動物に対して絶大な効果があることが伺われる結果となりました。

 水換えの頻度の高い水草水槽にあっても鉄分は不足がちな成分の最たるものであることは多くの水草ファンが経験的に感じられているところだと思います。

「二価の鉄」は当初の目論見通り水草にはほぼパーフェクトな効果を示しました。様々な水草の生長が促され、赤系統の葉がきれいに発色するようになります。
その中で特に驚いたことは多くの水草ファンが頭を悩ます「黒ひげゴケ」がいつの間にか衰えて姿を消すことです。これまでピンセットでむしり取ったり、水草ごと木酢液に漬けたりして決定的な対策の無かったやっかいもののコケが全く見られなくなったのです。
 黒ひげゴケでお困りの水槽に「二価の鉄」を用いられる場合には、一時的でも結構ですから成長の早いハイグロフィラなどの有茎草を大量に植え込んでみてください。有茎草が著しく成長し、トリミングを2、3回繰り返す頃にはハッキリとした効果が認められます。ぜひお試しください。


 海水水槽では弊社が懇意にしているNセンターにサンプルを提供して、店舗内の様々な水槽に添加してもらいました。もちろん最初は半信半疑で小さな水槽から使ったのでしょうが、ある日電話があり、「あれすごいよ、店内の水槽が開業以来の素晴らしい見てくれになったよ!」とのお褒めの言葉をいただきました。
Nセンターからのレポートには、

 
1 リン酸(オルトリン酸)濃度が激減する。
   6ppmあったものが1ヶ月後には0.25ppmにまで下がった。
   給餌をほとんどしない無脊椎動物の水槽では概ね0になる。

 
2 硝酸塩濃度が下がる。
   200ppmあった1tの魚類水槽が1ヶ月後には50ppmになっていた。

 
3 無脊椎動物のポリプの開きが格段に良くなった。

 
4 コケの発生が少なくなり、水槽内面への付着物がなくなった。

 
5 海外から入荷直後の魚の立ち直りが極めて早くなった。

などの効果がうたわれていました。


 これらの評価をもたらした二価鉄の作用に対して考察を加えてみました。これは私の個人的なかつ手前味噌な考え方ですので当然異論があってもおかしくはありません。別の見解がありましたらぜひご指摘ください。


 
1 リン酸濃度が下がる

 リン酸イオンと(二価、三価の)鉄イオンが結合してリン酸(第一、第二)鉄という不溶物となって沈殿し、有害性を示すイオン状態のリンが減ったためです。リン酸試薬はイオン状態の(水に溶けている)リン酸の値を示します。

三価の鉄


2 硝酸濃度が下がる。

 水槽内には硝酸が減少するメカニズムが2つあります。

1つは植物や無脊椎動物の(褐虫藻による)光合成の材料(肥料)として消費されること。
これはそれらの動植物の活性が高まれば当然あり得る話です。

2つめは水槽内の脱窒細菌の働きによって硝酸が還元されたことです。
おそらく水槽内の脱窒細菌の生息量は、日々の水槽への給餌量などによって一定の制約を受けているはずですから一気に増えることはないはずです。従ってその部分が効いたとすれば個々のバクテリアの活性が高まったことや、硝酸を還元する際に用いられる還元酵素の成分として鉄イオンが不可欠であることなどが相乗的に働いたのではないかと思われます。

 水草や海藻、褐虫藻を共生させている無脊椎動物などが同居していれば、1の結果として硝酸塩が使われたことが想像されますが、硝酸塩を消費する生物相が水槽内にない場合には2の因果関係しか想定できません。

 様々な文献には二価鉄の存在が脱窒の効率を高める因果関係がうたわれていますので、具体的な作用機序が明らかにならないまでも二価鉄イオンの添加によって硝酸塩濃度が減少することは大いに期待されるところです。
 ただし、二価鉄イオンの添加のみで硝酸塩が限りなく下がるということはなく、そこには水槽内に同居している脱窒菌の絶対量によって自ずと限界があると考えるべきでしょう。脱窒専用の装置を付加するなどした水槽ではその効率が飛躍的に向上することは十分ありうる話です。


3 水草や無脊椎動物が元気になる

 二価鉄イオンは水槽内で飼育・栽培される動植物にとって必須の元素であることはもうご理解いただけたと思います。もともと限りある 成分量である鉄イオンは、当然のことながら短期間のうちに使い尽くされてしまうのではないでしょうか。鉄イオンのサプリメントを添加していない水槽を市販の試薬で測定しても、鉄分を見出すことはまずありません。鉄分のサプリメントは色々と商品化されていましたが、どれも鉄イオン濃度を明記しておらず、その添加量もかなり曖昧なものでした。果たして有効な濃度を添加できていたのか、はなはだ不安なものでもありました。中途半端な量を投入してもリン酸イオンと結合して沈殿してしまい、効果が出せていなかったのではないかと思われます。鉄分のサプリメントの濃度については次のメネデールの説明の中で触れます。
 従って、通常の管理手法で維持されて来た水槽内では、水草や褐虫藻にとって二価鉄イオンが決定的に不足していることは想像に難くありません。つまり腕利きのスタッフが管理しているプロのショップの水槽でも鉄は足りていなかったのです。
そこにある日二価鉄イオンが潤沢に供給された結果、鉄不足にあえいでいた動植物の多くが、本来の活性を取り戻したのだと思います。


 
4 コケの発生が抑制され、付着物が無くなる。

 コケも付着生物も本来は水槽内の同居者です。どのような生物も生存するためにはある種の基質(餌や肥料)が求められます。その基質は人為的に投与されない限り水槽内でほぼ一定の存在量であることが多いと思われます。同じ基質を摂取する生物は、それを求めて互いに争う競合関係にあります。水槽内では生きて行くための活性が高くなければ、その奪い合いの勝者にはなれません。本来優先種であったはずの競合相手の活性が下がれば、その立場が他の生物に取って代わられる可能性が出てきます。その優先順位を左右するのは飼育水中に増減する様々な物質の過不足ではないかと考えます。窒素やリン酸が蓄積することで死に至る生物もいるくらいですから、それらが増すに従って活性を失う動植物がいてもおかしくはありません。また活性維持に必須な物質が枯渇してしまう場合もあるでしょう。人間でいうところのビタミンやミネラル不足のような症状と考えれば良いでしょう。それらの過不足に対してより柔軟な対応のできる生物がコケや付 着生物なのではないでしょうか。「このごろ元気ないね。そのご馳走食べないの?、じゃ私がいただいちゃいますよ。」といった話です。本来日陰者であった存在の生物種が、競合生物の活性低下によって主役の座を占めるようになったのがいわゆる「きたない水槽」「コケだらけの水槽」なのではないでしょうか。
 そのような水質環境から有害な蓄積物が取り除かれたり、不足していた物質が供給されたりすれば、不調であった生物が本来の活性を取り戻し、彼等の基質となるものの摂取量が増えることになります。相対的に基質の取り分が減ったコケや付着物の勢力が弱まるのは当然の帰結だと考えられます。
「二価の鉄」を添加した場合、減少する蓄積物の最たるものはリン酸、次いで硝酸、不足していたのはもちろん二価鉄イオンであったと考えたいのです。


 
5 どうして新参の魚類の立ち直りが速やかになるのか。

 私たちが懸命に維持管理している水槽環境なるものは、そこに飼われる生物たちにとって必ずしも最善のものではないと考えるのが飼育者に求められる謙虚な思いやりではないでしょうか。特に海水魚の場合、人間の管理下の繁殖によって生産された種の比率は極めて少なく、大部分は自然界から採捕された野生種ということになります。誰が考えても自然海域の水質を水槽の飼育水が上回るなどということはあり得ない話で、少なからず我慢を強いる環境に彼等を放つことになることは残念ながら真実といわざるを得ません。
 硝酸やリン酸の蓄積などとは無縁の水域に生息していた生物を、それらが大量に存在する水槽環境に収容するわけですから、中には未来をはかなんで食を断つものがいてもおかしくはありません。餌付けという行為は所詮生物の飢餓につけ込んだ人間サイドの陰謀でしかありません。
二価鉄イオンの添加によってもたらされる水質の改善は新参の魚介類がぎりぎり譲歩してくれる妥協点にかなり近づくことができるのではないかと期待しているところです。



二価の鉄の成分

 「二価の鉄」には有機酸と結びついた二価鉄イオンFe2+が15,000mg/l含まれています。さしあたっての安全濃度と思われる0.3mg/lの濃度 に二価鉄を添加するには60cm水槽(水量50リットル)に1mlの溶液を入れれば良いことになります。理想的には週に2回程度入れていただくのが良いようです。特にしばらく水換えをしておらず、リン酸イオンの蓄積量の多いと思われる水槽には添加量と頻度を増やしても問題はないと思います。容器には 200mlの溶液が入っていますので、60cmの水槽をお持ちの方が週2回1mlずつお使いいただいても100週分、約2年分の容量ということになります。


メネデールとの比較

 水草用の鉄分添加剤として「メネデール」という園芸用の鉄資材がベテランの愛好者には以前から用いられていました。最近は水草用メネデールなるものも発売されていますが、中身は園芸用のものと変わらないそうです。さてこのメネデールにはどれくらいの鉄が含まれているのか大変興味をそそられるところです。
 インターネット上には50ppmであるというマニアの方の分析結果が出ていますが、それに対してメネデール社からクレームはついていないようですので、大体当たらずとも遠からずといった数値なのでしょう。
 その数値を真に受けるとすると、「二価の鉄」は極めて高濃度の商品といえるのではないでしょうか。メネデールには様々なパッケージがあり、100mlか ら20lまで6種類の容器で売られています。二価の鉄200ml1本に含まれる二価鉄イオンの量はメネデールに換算すると20l容器3本分に相当します。圧倒的な高濃度であることがご理解いただけるかと思います。








二価の鉄の使い方
    
 淡水、海水とも飼育水50リットルに対し、1〜3ml、週に2回ほど添加していただくと、効果の確認が早いようです。「二価の鉄」は有機酸との結合構造 により遊離酸素には酸化されにくいのですが、リン酸との結びつきは強いようです。長く水換えをしていない水槽にはリン酸イオンが蓄積していることが予想されます。リン酸イオンが高濃度にある場合は二価鉄イオンと結合してしまう比率が高く、その分だけ水槽内で活用される有効量が少なくなるとご理解ください。
 「二価の鉄」は水槽内の植物や微生物にすみやかに吸収されますが、中には水中の遊離酸素と結合して酸化鉄、水酸化鉄として、またリン酸イオンと結びつい てリン酸鉄として沈殿するものがあります。それらは一般に黒い沈殿物の形を取りますので、フィルターや濾材が黒く色づくことがありますが、硝化細菌などの活性を阻害することはありません。

溶液のはかり方

「二価の鉄」の容器にはプッシュポンプが付いています。それぞれ1プッシュで200ml容器では1ml、60ml容器では0.25mlの水溶液が押し出されますので水槽の水量に見合った二価鉄濃度となるように添加量を決めて下さい。


 様々なサプリメントを投入される場合、水槽のコンディションを客観的に把握されることは科学的に水槽を管理する第一歩です。それには各種の試薬があると飼育水のコンディションを数値で知ることができます。鉄の効用を考えるようになった時、鉄試薬とリン酸試薬は必須のものと考え購入しました。さほど高価なものではありませんので、皆さんにもお勧めします。

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