ウンコに値がつく時代が来る!(その5)

腸内フローラを良くすれば健康で長生きができそうです。

どうしたら腸内フローラは良くなるのでしょうか?

他人との交わりで様々な腸内細菌をゲットしよう!

 健康に大きな影響を及ぼすとされる腸内フローラ。従来その多様性を生み出すのは、ほとんどの場合食生活であると考えられてきました。ところが最新の研究成果では食生活もさることながら集団や仲間との交流が深く関係しているらしいことがわかり始めています。集団内での交流は、他の仲間が持っている未知の菌群を取り込むことになり、腸内細菌の多様化が促され、結果として強靱な免疫システムを獲得するという因果関係があるらしいのです。 腸内フローラは指紋のようなもので一人として同じフローラを持つものはいません。つまり、私たちの体内に棲み着いている1000兆個になんなんとする細菌の種類もまさに千差万別で、人それぞれ他人の持っていないオリジナルな菌を持っている可能性が極めて高いのです。それらの中にはとてつもなく優れた種が隠れている可能性も否定はできません。いずれにせよ免疫の獲得には良きにつけ悪しきにつけ「感染」することが必要です。良い腸内フローラとは獲得した免疫がより多種多様であることを意味します。その引き出しが広くて深いほど(感染した経験が多いほど)将来起こるであろう未知の細菌との遭遇に際して強くて柔軟な免疫機能を発揮できる可能性が高まることになります。日頃から雑多な細菌を腸内フローラの中に導くことには大きな意義があり、できることならば積極的に実践すべきです。もちろん最悪の場合重篤な病気を引き起こすものが飛び込む可能性も覚悟しなければなりませんが、その軽重はさておき感染という経験値は積めるわけで、その結果として次の感染時には重篤なダメージを軽減させ得る免疫を獲得するわけです。

 私たちの腸内に飛び込んだ(取り込まれた)細菌は既存の腸内細菌の仲間入りができるのだろうか? これは極めて難しいもののようです。腸内細菌の多くは母親から受け取ったもので垂直感染と呼ばれる経路から取り込まれます。いわば母親のお墨付きを持って体内に入ってくるのですから、体内に定着しやすいと考えられます。それに対し、食物や自然界、あるいは他人との交わりよって得られた細菌群(こちらは水平感染と呼ばれます)はそれなりの試練を経なければならないようです。人間の消化管というものは人間の体内にはあるものの、消化管の内側は口から肛門までつながった一本の管のようなもので、その内部に入ること自体はさほど難しいことではないようです。ただし、その先には部外者の侵入を阻む様々な障壁があり、そこを通過できたものだけに腸内細菌として生き残れるチャンスが与えられるのです。まず口の中をはじめとして消化器官の内部には既存の常在菌が跋扈しており、彼等との折り合いを付けなければなりません。前述した通り、常在菌の多くは生息場所を多数の仲間で死守している先住者でよそ者の侵入は徹底的に排除します。そのために抗菌物質などという飛び道具まで持っている場合もあります。「えら、すんまへん。ちょっと通しておくれやっしゃ」と腰を低くして挨拶してもそうは簡単に許しは得られません。また胃では金属をも溶かすと言われる強酸である胃液が分泌され、食物の分解をしながら食物と一緒に入ってきた雑菌やウイルスを殺す役割を担っています。これらの関門を通り抜け腸内に行き着くには針の穴ほどの偶然や幸運に恵まれる必要があると思いませんか?  しかし実際になにがしかの僥倖に恵まれて腸内細菌の一員として人体に定着するものがいることも事実です。またそれらの氏素性が日常の営みを通じて口や鼻を通過して入り込んできたものであることも分かっています。その存在を許す判断をしたのは一体誰なのでしょうか?私たちの腸内には飛び込んできた新参の細菌に居住許可を与えるなにがしかの許認可権を持った存在があるのでしょうか。

 その昔、始皇帝が統一事業を成し遂げる前の中国の戦国時代には、食客三千人と称して君主達が才能のある人物を客として遇し、客は君主に恩を返すべくその才を提供するといった故事がありました。才にも色々あって軍事や政経に長じる者もいれば、鶏の鳴き真似がうまいというだけの者もいたそうです。いわゆる一芸に秀でていれば食客として居候を決め込むことができたという良き時代の話です。

 私たちの腸内に様々な細菌が飛び込んで来て、腸内細菌の一員としてフローラを形成することのできるものもいれば、追い出されることもなく、フローラの間を泳ぎ回っているものがいる可能性も否定されることはありません。フローラを形成するものはおそらくそれなりの良き働きをする選ばれし細菌の末裔なのでしょうが、そうでないものは何のために生き残ることを許されたのでしょう?悪玉菌はなぜ駆逐されてしまわないのでしょうか。 それはいつかは役に立つ日が来ることを見越して「それまでゆっくりしていなさい」と居候を許されたものなのではないでしょうか。食客としてこの屋の主人、つまりあなたの腸の神様に認められたのです。

 インフルエンザのごとく死者が出るような重篤な病気が流行ったとしましょう。でも流行のさなかに放り出された私たち全てがインフルエンザの症状を示す訳ではないことは皆さんご存じの通りです。つまりおそらく私たちのほぼ全員が感染はするのですが、中には病気の症状を示す「発症」に至らない人もいるのです。この不公平というか運不運はどこから来るのでしょうか。それは個々が持っている病気への耐性、つまり免疫の違いによるものだと考えられます。今年のインフルエンザは香港A○○型だとします。はじめてこのウイルスに感染した人は発症する可能性が高いはずです。ところが実は30年前に香港A◎○型に掛かったことのある人はその時に獲得した免疫が○○型にも有効であるならば発症に至らない、もしくは症状が軽くおさまるのです。つまり私たちの体内にインフルエンザのワクチンの設計図のようなものがまさに記憶として残されており、引き出しの奥からそれを取り出すことができれば、急きょワクチンもどきの免疫を発動させることができるのです。良きも悪しきもひっくるめてより広範な細菌群に遭遇することを奨める意味は、発症しなければなお幸いではあるものの、取りあえず感染しておけばそれに対抗する免疫機能の設計図が引かれ、引き出しにしまうことができるということのようです。設計図の枚数は多ければ多いほど良いのです。

  腸内細菌がいなくなることはないのでしょうか

 実は腸内細菌が一気に大量に放出されることがあります。皆さん下痢ピーになったご経験をお持ちのことと思います。 あれは消化器官の中に進入した「何かやばいもの」を手っ取り早く体外に放出する人体の反応です。食べて間がなく、胃袋の辺りをさまよっているときは「おう吐」という形で口から吐き出します。こちらはゲロピーです。胃を過ぎて腸内に移動してしまった物は下から出すしかありません。その際、これまで役立っていた腸内細菌もそうでない細菌もみんな道連れにして放出します。そうしないと「やばいもの」を完全に排除することが出来ないからです。このフローラはすごく良い仕事をしていて日頃から体のために役立っているのでどうかお目こぼしをと懇願しても駄目なのです。「あきまへん!皆さん全員出ていっとくれやす!!」と尻をたたかれるのです。これがまず一つ目の放出。

 もう一つは皆さんご存じの「抗生物質」が引き起こします。「抗生剤」と呼ばれることもありますが、常在菌はよそ者の細菌の侵入を阻止する物質を作る、その抗菌作用を活用したものが「抗生物質」であることはすでにお話ししました。抗生物質の発明によって多くの人命が死病や重大な感染症から救われました。人類にとっては偉大な発見でした。私たちは抗生物質に最大限の感謝をしながらこれからも使い続けることでしょう。近年抗生物質が効かない耐性菌が問題視されるようになりましたが、その話題はまた別の機会に触れることにしましょう。一般論として抗生物質は特定のターゲットにだけ作用するのではなく、それらを含めた広範囲な細菌をことごとく追い払うためのものです。これが一定量、一定期間人体に投与されると、目的とする病原菌のみならず、腸内細菌を含めた他の常在菌群も殺されたり弱らされたりするので、腸内にとどまる力を失い、体外に排泄されてしまうのです。医者の処方する抗生物質を宝物のようにありがたがる方達がいますが、これは自分の体内に共生している、当人にとっては強い味方である貴重な腸内細菌、腸内フローラを壊滅的に破壊することと引き替えに行われる医療行為であって、まさに両刃の剣、苦肉の策でもあるのです。

 でも大丈夫、下痢ピーになっても抗生物質を投与されても、あなたの腸内細菌は必ず復活するのです。しばらくの間菌の数は減るかも知れませんが、すみやかに元の賑わいを取り戻すのです。腸内細菌の多くが排除されると、常在菌であった彼等が不在となるわけですから、よそ者が侵入しやすくなります。口から入った腸内細菌の予備軍は既存の腸内細菌による排除機能が弱まっていることから、腸内に定着できる可能性が高まります。なにしろ腸内に隙間なくできあがっていた腸内フローラの大部分がなくなってしまったのですから、その跡地がいっぱいあるのです。終戦後の焼け野原にバラックを建てるようなものです。 注意しなければならないことは、腸内細菌の密度が元通りになるまでの間は、当然のことながら従来腸内細菌が行っていた諸々の働きも減ってしまいますから、病気に対する抵抗力も弱まることになります。 ただ腸内細菌のほとんどがいなくなっても病気に対する防御機能がゼロになるわけではありません。なぜなら免疫を作り出すための設計図は残っているからです。

 「あの先生はすぐペニシリンを注射してくれるよ」などと抗生物質を処方する医者は良い医者だなどと評価する誤った風潮が私たちの中でまかり通った時代もありました。でもやむを得ぬ場合を除いて抗生物質をありがたがって常用するようなまねはしない方が良いことは今や常識となっています。腸内細菌が私たちの健康と密接な関係を持っていることが解明されつつある今日、より健康な日々を送るためには、腸内細菌に壊滅的なダメージを与える抗生物質を使わずに済むような日常の体調管理に努めましょうということに尽きるのではないでしょうか。

 しかし、あなたの腸内細菌に壊滅的な事態が起こったとしても、それは決して悪いことばかりではないかも知れません。なぜならば、あなたの腸内にこれまで棲んだことのない、もしかしたらとてつもなく強力な免疫を作ってくれる未知の新顔菌が飛び込む(棲み着く)可能性も増えるからです。そのことによってあなたが将来被る重い病気のダメージを軽く済ませられ、長生きできるかも知れないのですから。

 

細菌は汚くない

抗菌ばやりの昨今、他人の排泄物に触れる機会などほとんどありません。

より多くの細菌と遭遇したいあなた、まず意識改革をしてください。

進んで汚いものに触りましょう(子供からその機会を奪ってはいけません)

公衆便所は絶好の細菌収集場所です。中で思い切り深呼吸をしましょう。

つり革を汚いなんて思ってはいけません。抗菌グッズなんて捨ててしまえ!

より広い人間関係を築きましょう。それはあなたの財産にもなるのです。

握手をしましょう。できればハグしてキッスもしてしまいましょう。

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