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Answer PSB17 

Q 光合成細菌をミジンコの培養に使いたいと思います。どれくらいの量を入れれば良いのでしょうか?

培養中のモイナ(タマミジンコ)

A 光合成細菌は他の生物に毒性を示さないことが解明されています。入れすぎて生物が死ぬことはまずありませんので、かなり大胆にお使いになれば良いと考えています。
おそらく皆さんが取り組まれているミジンコの培養方法は、大型の水槽や池などに水を張って鶏糞などの肥料を散布して行われていると想像します。中には小さな水槽でミジンコそのものを鑑賞されている方もいらっしゃるかも知れません。
いずれの方法にしても飼われているミジンコが主として食べている餌は、培養装置内に自然発生した植物プランクトン(緑藻の仲間)や微細な生物であることは共通しています。
鶏糞は植物プランクトンへの「肥料」として入れるのであって、その結果増えた植物プランクトンを他の微生物も補食し、最終的に植物プランクトンと微生物の双方をミジンコが補食するという食物連鎖の起点となる肥料成分を供給することにあります。鶏糞そのものをミジンコが食べているわけではありません。
 魚の初期餌料として極めて重要なミジンコやワムシを水産試験場などで専門的に培養する場合には鶏糞を用いることはなく、クロレラと酵母を併用しているケースが大部分です。

 余談になりますが、その昔、ヤクルトがクロレラを一手に扱っていた時期がありました。、20ℓ入りの濃縮クロレラをミジンコやワムシの餌として全国発送をしていたのです。ある程度の年齢の方は「クロレラヤクルト」という古い呼び名を覚えていらっしゃると思います。ヤクルトをクロレラから作っていたのかどうか詳しい事情は知りませんが、クロレラの培養部門を持っていたことは間違いのない事実だったのです。その後ヤクルトがその分野から撤退するに当たって、従来の利用者に混乱を招かぬよう、九州のクロレラ工業に供給を委ねたという経緯があり、現在は日本全国のクロレラの大部分は同社が販売しているようです。

 ミジンコはクロレラのような緑藻類を好んで食べますが、近年問題視されている、いわゆる「アオコ」と呼ばれる藍藻類はあまり食べません。金魚の稚魚の育成池では鶏糞を投入すると池の水が植物プランクトン(緑藻、珪藻)の増殖によって緑色に変わります。すると餌の不足によってそれまで生息数が抑制されていたミジンコが爆発的に増え、緑の水があっという間に透明になります。この頃に金魚の卵が孵化するように卵の付いた魚巣をセットしておくのですが、この辺の時期の見極めがプロの経験値に基づくもので、大小のミジンコをたらふく食べることのできた稚魚の成長には目を見張るものがあります。

 アオコまみれの池や湖をミジンコを使って浄化できないかといった取り組みもあるようですが、藍藻類をあまり好まないミジンコの嗜好の面から考えますと、アオコ対策としては根本的に無理があるようです。ちなみにミジンコ培養に酵母を併用するのは餌としての栄養価として必須の不飽和脂肪酸の不足を補うという意味があります。クロレラだけで増やしたワムシやミジンコでは稚魚の成長に不足する成分があるのです。今では皆さんにクロレラを小分け販売してくれるペットショップも増えましたが、おそらくその辺の事情を説明できるスタッフはいないと思います。

 このブログを読まれたことで、餌としてのミジンコの栄養価について関心を持っていただければ、これまで越えることのできなかった稚魚育成の「壁」を克服することができるかも知れません。

 ミジンコにはビタミンB12が必要
ここに私の友人で釣り仲間でもある織田邦明氏がヤクルト在職時代に出願した「ミジンコの培養方法」という公開特許公報をご紹介します。特開平10-113095
もう20年も前のものですが、ミジンコ培養における光合成細菌の添加の有用性を理解していただく上で役に立つと思いますのでぜひ目を通して下さい。
光合成細菌はその体内成分として生物中で最大濃度のビタミンB12を含有しています。上記の特許出願はミジンコの培養にはビタミンB12が必須であることを解き明かしたものですので、光合成細菌の活用方法が自ずと明らかになるはずです。また酵母の投与によって補っていたミジンコの栄養価が光合成細菌によって賄われる可能性も感じられます。