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脱窒菌について

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脱窒菌について

脱窒菌について

2023/10/22

脱窒菌は有機物を利用して増殖する従属栄養細菌であり、また通性嫌気性細菌でもあります。

好気的な条件下では遊離酸素を利用しますが、それがなくなるとNO2やNO3に結合している酸素を利用して呼吸します。

この呼吸メカニズムを利用してアクアリウムの飼育水から硝酸塩を除去しようというのが脱窒の目的です。

窒素固定化する細菌には次のような種類が知られています。

  • 偏性(絶対)嫌気性細菌
  • 通性(条件)嫌気性細菌
  • 微好気性細菌
  • 光合成細菌(嫌気性、通性嫌気性)
  • 藍藻(微好気性、好気性)

これらの中で脱窒を目的としてアクアリウムに利用できるのは、コントロールの容易さから考えて主に通性(条件)嫌気性細菌であると思われます。また近年、ゲル化加工をした光合成細菌を用いた脱窒の試みがなされています。菌の特性としてCODやリン濃度の低減も期待できるので、将来的に主役の座に躍り出る可能性もあります。

通性嫌気性細菌は好気的条件下では酸素呼吸を行い、嫌気的条件下でのみ脱窒を行うと考えられていますが、その理由としては、以下の要因が想像されます。

  1. 好気的条件下では脱窒反応を触媒する酵素系の合成が阻害される。
  2. すでに酵素系が合成されている場合でも酸素によって酵素系が不活化される。
  3. 電子伝達の経路が硝酸(嫌気条件)から酸素(好気条件)に切り替わる。
  4. 以上の3つの要因の複合による。

近年、脱窒細菌の細胞膜の硝酸に対する透過性が周囲の溶存酸素濃度により変化することが明らかにされ、酸素による脱窒の阻害の機構が重要であると考えられるようになりました。

好気条件下では酸素呼吸の方が脱窒よりも熱力学的には有利なことは明らかです。しかし、好気条件下での脱窒が全く不可能なわけではありません。事実、酸素濃度が低い場合には酸素呼吸と脱窒が同時に行われる可能性も指摘されています。

嫌気呼吸の一つである脱窒は最終電子受容体として硝酸(および他の酸化態窒素)を用い、酸素呼吸に次いでエネルギー効率が高いとされています。脱窒は硝化呼吸の一形式であり、

NO3 → NO2 → NO → N2O → N2(窒素ガス)

と連続的に進行する異化的硝酸還元反応により硝酸を還元して分子状窒素を生成します。

脱窒菌の還元型

海洋性脱窒細菌には次表に示すように、五つの還元型があることが知られています。

写真1 デニボール

I,II,IVの脱窒菌  : アンモニアや亜硝酸などの有毒物質に還元する危険性を伴う
III,Vの脱窒菌  : 窒素ガスとして飼育水から窒素分を放出するアクアリウムには安全で最適

全ての脱窒菌が窒素ガスを生成するわけではなく、窒素ガスを生成するのはIIIとVの還元型のみです。

I、IIやIVにいたっては硝酸から亜硝酸に、亜硝酸からアンモニアに逆戻りする同化型還元を行いますので、硝酸塩は減っても亜硝酸やアンモニアが増加する危険きわまりない脱窒になってしまうこともあります。そのため飼育水槽では脱窒槽からの戻りは硝化槽に送ることが安全性確保のために必要となるのです。

脱窒菌の還元型と窒素ガス生成菌の割合

脱窒菌の中では、硝酸や亜硝酸は還元するが窒素ガスを生成しない広義の脱窒菌(硝酸、亜硝酸還元細菌)のほうが圧倒的に多く、窒素ガスを生成する狭義の脱窒菌は全細菌数の数%前後かそれ以下と意外と少ないのが実態です。従って、アクアリウムに脱窒機能を導入する場合には、狭義の脱窒菌をいかに効率よく繁殖させるかが安全で確実な効果に直結してくることになります。

狭義の脱窒菌だけを増やすことは可能なのでしょうか。

市販の硝化菌や脱窒菌について

市販の硝化菌を用いる目的には2つの考え方があります。

水槽立ち上げ時には濾過槽にはほとんど硝化菌がいません。硝化菌は増殖時間が長い(倍加には24~48時間かかる)こともあって、有効な菌密度に達するまでにはかなりの時間を要します。その期間中には硝化菌による酸化量が不足気味となるため、アクアリウムの飼育生物は有毒物であるアンモニアや亜硝酸の脅威にさらされることになります。これを防ぐために硝化菌の絶対量を、あらかじめ人為的に増やすというのが一つ目の目的です。

濾過槽のコンディションは常にイコールではなく、何かの原因で硝化機能が阻害されることがあります。通常は亜硝酸を測定することで濾過槽のコンディションを推測しますが、通常はほとんど検出されない亜硝酸濃度が急激に持ち上がることがあります。それは濾過槽の目詰まりや濾材量の不足などが原因となっていることが多いようです。このような場合には濾過槽をメンテナンスしたり、濾材を増やすなどの措置を講じますが、硝化菌の絶対量が不足している事態は変わりません。そのような非常事態に、急場の「助っ人」として硝化菌を添加することで、危機をしのぐような使い方が二つ目の目的になります。

アクアリウムの濾過槽はアクアリウム自体の素材構成や給餌内容によって微妙に個性が生じるもので、そこでは自ずと個々の環境に最も順応した優占種が出現し、占拠することになります。人為的に添加した市販の硝化菌が、必ずしもその濾過槽に居着いて増殖を繰り返すかどうかは極めて不確実なもので、やがて他の硝化菌に凌駕されてしまうことも考えておかなければなりません。従って、市販の硝化菌はあくまでも一時しのぎの方便であって、商品のラベルに謳われているような素晴らしい浄化能力が、未来永劫保証されるものではありません。もし市販の硝化菌にこだわるのであれば、定期的かつ長期にわたって硝化菌を添加し続けることが必要と思われます。

ちなみに市販の硝化菌(かなり曖昧な商品も大手を振って出回っています)は容器の中で休眠状態にあり、飼育水に添加してすぐに本来の活動を始めるというものではありません。中には菌体が見あたらないような詐欺まがいの商品もあるやに聞いています。また硝化菌は水中に浮遊している状態では、本来の硝化能力を十分には発揮できないようです。適当な基盤(濾材)の表面に定着し、増殖を重ねることで自らのクローンを周辺に形成して、コロニーと呼ばれる高密度の集団とならなければ目に見えた効果は現れません。その辺の事情に鑑みると硝化菌の添加には私自身否定的な見解をもっているのですが、脱窒菌に関してはその限りではありません。

こんなこともありました。

脱窒エリアとなりうるように、水の動きが少なく有機物(生分解樹脂)を若干量充填した(酸素が消費され嫌気環境になりやすく、従属栄養細菌が増殖できる餌が豊富な)空間を水槽の一部に設けた水槽を作ってみました。

硝酸塩濃度の動向を定期的に測定していたところ、設置後しばらくの間は脱窒の効果が見受けられたのですが、徐々に硝酸塩の濃度が上昇し100ppm前後にまで高まってしまいました。当初はそのような空間の中では、対応できる窒素化合物の種類が多いⅢ型のものが最終的に優占種となり、安定した脱窒が行われるのではないかと想像していたのですが、そこに増えたのはどうもそれ以外の広義の脱窒菌であったようです。

そこで市販の脱窒菌を5ccほど脱窒エリアに添加したところ、何と驚くなかれ一晩の内に概ねゼロのレベル(もちろん亜硝酸もゼロ)にまで硝酸塩が激減したのです。

市販の脱窒菌は各メーカーが狭義の脱窒菌を選別培養したものと思われますが、添加によって脱窒エリア内のⅢ型もしくはⅤ型の脱窒菌が急激に勢力を伸ばしたのではないでしょうか。実はこれに用いたのはバイコムの脱窒菌でしたが、脱窒菌は従属栄養細菌ですから、硝化菌のように増殖に時間の掛かるものではなく、増殖条件さえ整っていれば極めて短期間のうちに生息密度を高め、所期の期待に応えてくれるもののようです。

この経験で考えを改めたことは、脱窒機能を付加するには脱窒エリアをどのように構築するかと言うことだけでなく、そこに定着させる脱窒菌の種類も吟味しなければならないということです。

状況によっては市販の脱窒菌を添加し、脱窒エリアに住み着く従属栄養細菌群の組成にまで介入しなければならないこともあり得るようです。硝化菌と脱窒菌の大きな違いはその増殖スピードにあります。従属栄養細菌である脱窒菌は増殖条件さえ整えておけば、極めて短期間のうちに私たちが期待する脱窒機能をもたらしてくれる可能性を秘めているように思います。ただし、一時的に増殖した脱窒菌が、その後も大手をふるって活躍してくれるかどうかは、硝化菌同様に不確定要素の高いものであることを知っておいていただきたいと思います。

生分解樹脂を脱窒素材に使うための基礎実験

1.最もベーシックな方法 生分解樹脂を底砂に埋める。

デニボールがもてはやされていた頃、底砂の中にボールを埋めるだけで脱窒が行われるという使い方が紹介されていました。確かにそれなりの効果はあったようですが、埋める深さや底砂の粒径などにより、必ずしも最善の結果が得られたわけではありません。

ここで思い出して頂きたいのは脱窒の行われる溶存酸素の条件です。絶対的な嫌気環境下では脱窒よりも硫酸還元が勝り、脱窒は行われません。(硫化水素の発生が脱窒に寄与することはあります。)

従って底砂の種類や粒径によって、埋める「最適の深さ」が異なるであろうことは皆さんにもご理解いただけるものと思います。

それが目で見えないから困っちゃうんだよねーとおっしゃるあなたにお教えしましょう。硫酸還元が行われているエリアでは「砂が黒くなる」のです。つまり埋めた生分解樹脂の周辺が黒くなるようであれば、深すぎます。砂の粒径が大きければ、かなり深く埋めても黒くはならないのですが、粒径が小さければ小さいほど、溶存酸素の供給が阻害されるため、数ミリの深さで硫酸還元が起きてしまいます。

水槽の底砂に生分解樹脂を埋め込んで、脱窒を促すのであれば、試験的に底砂をコップのようなものに取り出し、様々な深さに樹脂を埋め込んでその後の変化を見比べれば、どの程度の深さに樹脂を埋めれば良いのかが視認できます。砂がややグレーがかった色になれば、少し硫酸還元が起き始めていると判断できます。実際の水槽では微妙な水流により底砂の内部にも酸素が供給されていますから、水流のないコップの中では硫酸還元寸前であったものが実際の水槽ではいくぶん好気的になりますので、程良い「やや嫌気」のエリアとなります。

図1 底砂の粒径と樹脂板を埋設する深さの関係

2.分解された樹脂成分はどこで消費される?

図2 生分解樹脂の外周に微生物が蝟集する

樹脂はまずその表面から分解され始めます。この作業に従事するのは樹脂の表面やその直近に定着した微生物(バクテリアとは限りません)であるはずです。彼らが放出する分解酵素によって分子構造の鎖を断ち切られた樹脂は水溶物となって彼らの体内に取り込まれます。しかし樹脂成分のすべてが直近の微生物に取り込まれるかどうかはわかりません。

水溶物の何割かは拡散作用によって周辺に分散するでしょうし、分解エリアに水流が当たれば他所に流れ出る比率も高まるのではないでしょうか。

 

図3 微生物は徐々にコロニーの厚さを増して行く

当初樹脂の表面に定着し、樹脂成分を餌として増殖を開始した微生物は、やがてその外周にコロニーを肥厚させて行きます。コロニーの厚さが増すにつれて、外周部の個体は自らが分解作用に加わらなくとも、樹脂の表面部で他の仲間が分解した樹脂成分によって成長して行くことが予想されます。

当初樹脂の直近に住み着いた微生物が、好気下でしか生きられない種であるならば、やがて内奥部は彼らの生存に適さない環境となり、その多くが死滅することになります。溶存酸素の供給量が減るに従って、そこに生き残れるのは通性嫌気の呼吸をすることのできる種ということになり、彼らのおこなう呼吸「硝酸呼吸」こそが私たちの求める「脱窒」のメカニズムとなるのです。

 

写真1 ペレット単独では分解が進まない

生分解樹脂が単独で水中にある場合と樹脂の周辺が砂や濾材などによって囲まれている場合とを比較してみましょう。

写真1は生分解樹脂(バイオポール)のペレットをガラス容器内の水中に漬け込んだものです。

水はグッピーを飼育している水槽のものを用いました。

エアレーションなしで放置していますが、1ヶ月を経過しても樹脂に変化が現れません。水が濁ることもありません。つまりほとんど分解されていない状況にあります。私の予想とは全く違った経過でしたので、樹脂の種類を間違えたかと思ったほどです。

 

下の写真2左側は貝化石粉末の底部に5cm四方の生分解樹脂板(約1.6g)を埋め込んだものです。若干の硫酸還元も行われているようで、砂の下方は貝化石の色が黒ずんでいます。透明度も高く水中にミジンコのような小型の生き物が多数動いているのが見えます。悪臭はなく、pHは8.0、硝酸塩は検出されません。(ともにテトラ試験紙)

右側は約10gのペレットを貝化石粉末に混ぜて水中に入れたものです。貝化石の表面が黒く変色しているのは硫化水素の影響と思われます。水も透明度がなく、水面からはどぶの臭いがします。pHは7.5、硝酸塩は検出されません。

しかし生き物の気配はまったくありません。いわゆる富栄養の状態になったものと見受けられます。双方の容器とも手に持って振動を与えますと貝化石の表面から大量の気泡が浮んできます。

左側 生分解樹脂板1.6gを貝化石の最下層に敷いたもの

右側 生分解樹脂のペレット10gを貝化石粉末に混ぜていれたもの

 

写真3 様々な素材と漬け込む

生分解樹脂のペレットをいろいろな素材と一緒に水に漬け込んだ1ヶ月後の様子です。素材を先に入れ、あとからその表面部にペレットを撒きました。水は中和処理をしていない水道水です。

 

  1. 左側は対照区で、ペレットのみを入れたものです。
    樹脂が分解された様子はなく、水も透明度を維持しています。
  2. 左から2番目はアラゴナイトという商品名でペットショップで売られていた一見サンゴ砂に似たものを敷きました。
    対照区に比較して心持ち濁りが感じられる程度で、明らかな分解を感じ取るまでには至っていません。
  3. 左から3番目は貝化石粉末のものです。
    3種の中では最も分解が進み、水色も若干黄ばみを帯びています。
  4. 左から4番目はガラスリング状濾材を用いたものです。
    水の濁りは貝化石に引けを取りません。つまり分解そのものはかなり進んでいるように見受けられます。
    水底付近には白い澱(おり)のようなものが溜まっていますが、これがバクテリアのコロニーなのか、樹脂の分解物なのか判断ができません。貝化石と異なるところはリング状濾材は白い色を保ったままで、硫酸還元の発生を意味する黒化現象が全くないことです。濾過槽や水槽内では水流によってこれらの沈殿物は流され、とどまることはないのでしょうが、これがコロニーだとすると樹脂の分解はさらに加速されることになると思われます。当然黒化現象が起きても良さそうなものですが、そうならない理由がわかりません。この濾材の持つ未知の可能性のようなものを感じることとなりました。
写真4 ③、④を容器上方から見たところ

写真4は同じ容器を水面から見たものです。

左側が貝化石の試験区です。水底の貝化石が黒く変色しているのがおわかりでしょうか。ペレットは貝化石に混ぜたのではなく、貝化石の上に撒いただけですが、明らかに硫酸還元が行われているようです。

これは大発見です。つまり貝化石の上に落ちたペレットは当初好気的な環境で従属栄養細菌に分解されますが、その進展に伴いペレット周辺の溶存酸素が消費され、かつ貝化石の内部(深部)ではそれが顕著で、表面部で水溶物とされた樹脂の成分が内部にまで拡散することで、容易に硫酸還元が起こったと推測されます。貝化石の粒子はかなり細かいので、表面からわずかな距離で酸素が消費され、かつその補充も十分ではないのでしょう。もちろん水槽の内部のように微妙な水流があれば、このような顕著な結果は出ないとは思いますが、このことから想像されるのは、水槽の底砂の部分ではごくわずかな砂の厚みの中に好気から嫌気までの溶存酸素濃度環境が構築される可能性があるということです。

 

写真5 円筒形水槽の外観

 

写真6 底砂の色の変化

 

写真5:円筒形の水槽の底部に短冊形に切った生分解樹脂を敷いてみました。

この水槽ではアルテミアの幼生を飼育しており、餌には淡水クロレラとドライイーストを与えていますが、硝酸塩は検出されません(テトラの試験紙では色が変わりません)。

写真6:この写真は水槽の底砂の部分を側面から撮影したものです。水槽内は小さなエアレーションのみで、円筒の内面に沿った循環流が起きています。

ちょうど画面右下隅から気泡が上がり、その気泡によって動かされた水流が左側上方から底砂に向かって降りていると理解してください。(矢印のように)

底砂はサンゴ砂の極細粒ですが、見事に色が分かれています。画面左側はサンゴ砂本来の色がそのまま残っています。右側は硫酸還元によって黒変したものです。水流が常に当たっている底砂の表面部は硝化菌をはじめとした好気性の微生物が占拠しているものと思われます。左側の砂の色が白く残っている部分は水槽の左上方から降りてくる水流が底砂の内部にまで浸透し、溶存酸素を供給することで硫酸還元を抑制しているエリアと考えられます。それ以外の黒変した部分は硫酸還元によってもたらされた硫化水素の作用で変色したものです。

この結果から考えられることは、この水槽内では明らかに脱窒が行われており、その量が硝化を上回るか拮抗しているということです。砂が黒変している部分はおそらく絶対嫌気に近いエリアでしょう。本来の砂の色が残っている部分は絶対嫌気から「やや嫌気」を経て通常の溶存酸素量までの酸素濃度となっているはずです。その濃度勾配のどこかで脱窒が行われているのでしょう。

底砂の最下方の樹脂板の周辺で硫酸還元が行われているのは明らかとしても、そこで分解され水溶物化した樹脂成分は底砂の上方に向かって拡散し、それぞれの溶存酸素濃度に応じた還元作用(脱窒、硫酸還元)に用いられていることが想像されます。

つまりサンゴ砂の極細粒のようにかなり目合いの小さな粒子であっても、樹脂の水溶物は通過して拡散すること、水流があれば溶存酸素も底砂の一定の深さまで浸透することが底砂の色と硝酸塩濃度から証明されたわけです。

様々な予備実験の事象から次のような推論をしてみました。

① 生分解樹脂はむき出しの状態よりも、底砂や濾材のような微生物の定着基盤に接触させた方が分解を受けやすい。それは、分解に関与する微生物が隣接して大量に維持される結果と思われる。

② 底砂の粒径や厚みの違いは溶存酸素の物理的な通過条件として捉えることもできるが、むしろ底砂は様々な微生物の生息場所でもあり、その表面部を最大の密度として好気性の微生物が生息しており、深部になればなるほど溶存酸素は消費されて到達量が減少すると考えられる。このような生物学的な通過条件も加味すると、底砂の内部ではそれぞれの酸素濃度に適合した様々な還元作用がなされる条件がすでに成立していると考えられる。

③ 微生物によって分解された樹脂の溶出成分は、一部は分解に関与した生物によって消費されるが、すべてが消費される訳ではなく拡散の原理や水流の影響などから、水槽内の各所に到達するはずである。その量は樹脂量やバクテリアの生息基盤となる素材の違い、通過する底砂の粒径などに左右されるものと思われる。

④ ②の条件下に③の溶出成分が到達すれば、脱窒もしくは硫酸還元がなされる可能性がある。すなわち水槽の底砂部分においては溶存酸素の濃度として潜在的に脱窒もしくは硫酸還元が起こりうる条件がすでに成立しており、それが水質的に顕著な数値として認識されないのは脱窒のもう一つの条件である有機物(炭素源)の供給量が微量であるからだと思われる。

脱窒量<硝化量であれば、硝酸塩は蓄積し続け、蓄積カーブが緩やかになるだけである。通常の水槽環境下でも脱窒は硝化と平行して行われているが、脱窒量>硝化量となるほどの有機物の供給がなされないので、脱窒の実態が認識されにくいのであろう。事実硝酸塩のたまり具合が遅い(脱窒量の多い)水槽というものには経験的に何度も遭遇している。その差異は有機物の供給量もしくはそれらを脱窒の原材料として活用できるかどうかの濾材や底砂の形状の違いによってもたらされると思われる。

⑤ 生分解樹脂が水槽内の底砂のような、少なくとも樹脂の分解エリアとして有効な部位に埋設された場合、そこから供給される溶出成分(有機物)によって埋設場所付近において、もしくは溶出成分が到達する他の場所において脱窒もしくは硫酸還元が促される。

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